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第40話  

篠田初と白川景雄は並んで宴会場へと続く廊下を歩いていた。

 つい先ほどまで外では尊大で威厳ある名門の御曹司だった白川景雄は、今やすっかり従順で愛らしい子犬のようになり、笑顔を絶やさず、篠田初に向けて視線を注いでいた。

 「松山家の連中、よくも姉御をいじめやがりましたな。次に同じことをしたら、俺、白川景雄が絶対に許しませんからな!」

 篠田初は薄く微笑み、からかうように言った。「いいわね、白ちゃん。普段はいい加減なのに、真面目になると結構サマになってるじゃない。私、ちょっと驚いちゃったわ」

 「もちろんですよ。俺は白川家の六番目の若様なんですからな!」

 白川景雄はそう言いながらも、相変わらず従順な子犬のような様子を崩さなかった。

 彼は篠田初を上から下までじっくりと見つめながら言った。「でも、初ちゃん、宴会に参加するっていうのに、ちょっと地味すぎませんか?」

 「礼儀を知らない子ね、姉さんと呼びなさい」

 篠田初は訂正するように言った。

 「なんで俺の妹だけがそう呼んでいいんです?」

 白川景雄はまるで小学生のように幼稚な口調で言った。「俺は嫌だ。これからは君のことを姉御とも姉さんとも呼ばない。初ちゃんと呼ぶことにする!」

 「ダメよ!」

 篠田初は警戒しながら言った。「年下が姉さんと呼ばないなんて、下心でもあるんじゃない......さて、何を企んでるのかしら?」

 白川景雄は正直に答えた。「君が離婚したんだから、俺の下心があってもいいだろう?」

 彼は篠田初が離婚するのを待ち続けていた。そして、ついにその日が来たのだから、ただの弟でいるつもりはなかった。

 篠田初は唇を軽く上げて微笑んだが、それ以上の言葉は返さなかった。

 宴会場に近づいたとき、彼女は細い指で風衣のボタンを外し、風衣を脱いで脇に投げ捨てた。そして、束ねていた髪を下ろすと、真紅の口紅を取り出し、無造作に唇に塗った。その後、彼女は自信に満ちた表情で軽く唇を噛んだ。

 「姉御、あなたは......」

 白川景雄はその姿に完全に見惚れてしまった。

 宴会場の人々も二人に目を向け、その美しさに息を呑んだ。

 篠田初はローズピンクのチューブトップドレスを身にまとい、完璧な体のラインを見せつけていた。鮮やかで魅力的でありながら、高貴で優雅な印象を与えるその姿は、誰の目にも
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